しけしけの銀座

家に帰ると、すっかり魔法が解けた気分。ああ。

 

今日は久々に昔の恋人と会った。

昔とはすっかり変わって、お金も持てるようになって、身だしなみにも気をつけ、最近はややモテ期らしい。

 

銀座の老舗のバーで、空きっ腹においしいお酒。

わたしがいただいたのは日向夏のカクテル、ジントニック、桜のカクテル。全部ていねいに作られた美味しさ。良いお酒はどうしてこんなに軽くて、いくらでも飲み込めてしまうのだろう、

 

彼も、仕事をやめ、新しいチャレンジを始めるらしい。夏までに仕事をやめ、今年は仕事はせず旅行をしたり様々なことをしたいそうだ。

 

「一緒に旅行に行こう」と仕切りに言う彼をかわしかわし。

付き合ってる時は、まともにデートにも行けなかった彼が、いまやごはんの予約から、素敵なバーまで連れていってくれて、旅行にも行こうといってくれている。本当に変わったね。

 

彼は本当にお金がなくて、当時わたしの部屋(狭い1k)に転がり込んでいた。

働く時間もすれ違って、まともにデートもできなくて、今ではどんな風にあの狭い部屋で一緒に住んでいたのか思い出せない。

 

それでも、あえば、共に過ごした時間のはしばしを語り合う。

よくいった居酒屋、蕎麦屋、いつもご飯を頼みすぎること、お酒を飲んだらすぐにベットによこになってしまうこと。

 

覚えてないようで、実はいろいろ覚えているんだよなあ。

 

バーに行ってから、中華料理屋へ。普通が逆だよね。お店に行く頃には、すっかり酔っ払いモード。

 

彼は酔っ払うと眠くなってしまう性質なので必死にお水を飲ませたけど、昔と変わらたくさん料理を頼んで、高い店なのに余らせるほど馬鹿みたいに頼んだ。

 

もちろん料理はおいしかったけど、正直よく覚えてない。お酒を飲んでしまうと、そりゃおいしさに集中できないよな。

 

彼も酔っ払っているから、会話が適当な感じだった。

ああ、杏仁豆腐から胡麻団子、坦々麺に紫蘇の炒飯、北京ダック、フカヒレスープ、前菜の盛り合わせ。。。一気に思い出すのが大変なほどに食べた。

 

すっかり眠くなった彼は、タクシーでさっそうと帰った。年末はわたしのこともタクシーに乗せて帰らせてくれたのに。どこまでも適当な人。

 

結局さみしい想いをして帰ったよ。楽しかったけど、おいしかったけど、なんかやるせない。いつも奢ってもらってるくせに、なんだか贅沢かな。

 

最後にキスを求められたけど、最後まで嫌がって触らせなかった。わたしには、きちんとしすぎるほどの理性がある。

 

でも、そんな理性を壊してくれるなにかを、少し待ってしまっている自分もいる。だから、昔の恋人に会ったのだ。

 

でも、何も変わらない。わたしは今の恋人と住む部屋にひとり、のうのうと帰って、いつもの部屋着に着替え、これを打っている。なーーんにも変わりやしない。

 

一緒に帰れない関係なら、おいしい時間も、むなしくなる。

何年も前、買ってもらった指輪をつけたけど、彼は買ったことすら覚えていなかった。

まあ、そんなものだよね。